2020/03/11
コラム
所有する空き家が「特定空き家」に指定されると、行政から指導や勧告を受けることになります。
それに従わない場合、代執行による強制措置が取られます。
行政代執行と略式代執行の意味と違いや、どのような措置がとられるのかについて解説します。
特定空き家とは、建物が放置されたり不適切な管理下にあるため、近隣住民へ危険を及ぼす恐れのある建物を意味します。
たとえば老朽化による倒壊の危険や、大量のゴミ・外壁や塀の一部が路上にはみ出ている状態を放置している家屋などが挙げられます。
まずは行政から指導が入り、勧告・命令を経て代執行の手続きに進みます。
建物の所有者がわかっているなら行政代執行、所有者が特定できないなら略式代執行の措置がとられます。
度々の勧告や命令に従わないと、行政代執行により建物の状況を改善します。
かかった費用はすべて建物の所有者が負担します。
費用は財産差し押さえなどで強制的に徴収されることになります。
略式代執行の場合、所有者が特定できていないためかかった費用は財産管理制度で補填します。
行政代執行よりも早く建物への対応ができるものの、補填しきれなかった部分の費用は税金で負担することになる点が大きな違いです。
東京都において、すでに行政代執行や略式代執行が実施された事例があります。
それぞれ以下のような手続きの違いがありました。
世田谷区で2017年に実施した特定空き家の解体では、はじめて民法の規定により不在者財産管理人制度が用いられました。
所有者が特定できないため解体費用は税金で賄われるところ、隣家の住人が土地購入の意向を示しました。
そのため解体費用は隣家の住人が負担することとなり、さらに通常の行政代執行よりもスムーズに建物の解体・土地の売却が完了しました。
空き家対策特別措置法による略式代執行の事例として、台東区による建物の解体・撤去があります。
長くにわたり放置されていた所有者不明の空き家について、倒壊の危険性が高まったために略式代執行で除却しました。
世田谷区の事例と違い解体費用は台東区の負担となる見込みが高く、費用の回収が課題となっています。
代執行の意味やそれぞれの事例について紹介しました。
行政代執行と違い、略式代執行では費用負担の問題があります。
そのため解体だけでなく賃貸や民泊への転用をすすめる取り組みも、活発に行われている点が特徴です。