2019/11/15
コラム
親が不動産などの資産を持っていると、親の死後に相続が発生します。
基本的に相続は権利を持つ方が譲り受けますが、ときに権利がなくなるケースがあります。
今回は、相続する権利があったのに相続できないケースとして、「相続欠格」と「相続人廃除」の違いについてご紹介します。
相続欠格とは、相続人が民法で定める以下の事由に該当した場合、将来の相続権を失うことをいいます。
(1)被相続人や、自分と同じ順位の相続権があるほかの相続人を故意に死亡させた(または死亡させようとした)
被相続人の遺産を、少しでも多く自分が有利に手に入れるために、被相続人や自分と同じ順位の相続権がある方を死亡させた、または死亡させようとして罪に問われた場合です。
なお、被相続人や自分と同じ順位の相続権のある方が介護が必要であると知りながら、食事を与えなかったり家に数日間置き去りにして外出したりする行為も該当します(保護責任者遺棄罪)。
(2)被相続人が殺害されたことを知りながら、告発や告訴をしなかった
万が一被相続人が殺害されたことを知ったら、相続人は犯人を告発または告訴しなければなりません。
しかし、犯人をかばって告発や告訴をしなかった場合は相続権を失います。
ただし、告発や告訴をするべき人物が小さい子どもの場合は除きます。
(3)被相続人の遺言書を、脅したりだましたりして遺言の取り消しや変更を妨害した
一度作成した遺言書は、被相続人の希望があれば内容を変更したり取り消したりすることができます。
しかし、そのことを知った相続人が被相続人を脅す、またはだますなどの行為を行なって遺言書の内容を変更することや取り消すことを妨害した場合は、相続欠格にあたります。
また、遺言書の内容を変える、もしくは取り消す意思がない被相続人に対して、自分にとって有利な内容に無理やり変更させたり取り消させたりすることもNGです。
(4)被相続人の遺言書を偽造・変更・破棄・隠ぺいした
被相続人の遺言書を発見した相続人が、自分が不利にならないように内容を偽造・変更したり、遺言書そのものを破棄・隠ぺいしたりすると相続権を失います。
上記のように、自分が有利に遺産を相続できるようにするために悪質な行為をはたらくと、相続権を失うのです。
なお、相続欠格がきっかけで失った相続人の権利は被相続人が生前に許さないかぎり、二度と回復することはありません。
相続人廃除は、被相続人が家庭裁判所に申し立てをすることで、相続人に相続の資格を失わせることができる制度です。
被相続人の意思によって影響をうけることが、相続欠格との大きな違いです。
ただ、被相続人がその人物を嫌いだからといった安易な理由では、相続人の資格を失わせることはできません。
そのため、以下のような特定の行為をした者が相続人廃除の対象者となります。
(1)相続人が被相続人に対して心理的・身体的な暴力をふるった場合や、相当な屈辱を与えた場合
(2)相続欠格に該当する事由以外の重大な罪を犯して有罪判決を受けた場合
(3)浪費やギャンブルなどで被相続人に多額の借金を払わせたり、反社会団体への加入など問題行動を繰り返した場合
(4)財産目当ての結婚や養子縁組をした場合や、不倫などの不貞行為をはたらいた場合
上記のように、社会通念上、廃除されて当然とみなされる者が相続人廃除の対象となります。
しかしながら、二度と相続人の資格を回復できない相続欠格とは違い、相続人廃除は資格を回復できる場合があります。
被相続人が生前に相続人廃除の原因となった問題を許し、家庭裁判所へ廃除を取り消すために必要な手続きをすると、許された相続人は相続権を回復することができるのです。
相続人が相続権を失ってしまうには、よほどの原因がある場合です。
譲り受けるはずだった財産を、自らの過ちで権利を失ってしまわないようにご注意ください。