2019/11/12
コラム
家族が亡くなった時に、不動産や預貯金などの相続が原因でトラブルが起こることは、残念ながら珍しいことではありません。
無用なトラブルを避けるためには、相続が発生する前に法的な要件を満たした遺言書を作成しておくことが重要です。
では、遺言書とはどのように作成すればよいのでしょうか?
今回は、遺言書の形式の中で、最も多くの人に作成されている自筆証書遺言とは何か、そして、気を付けるべきポイントと、相続法改正による適用要件の緩和について解説をしていきます。
自分の死後に言い残す言葉を一般的に「遺言」と言い、遺言を記載した書面を遺書と呼びます。
そのうち、民法が定める「必要な条件」に基づいて作成された書面が「遺言書」となります。
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の遺言方法があります。
3つある遺言方法のうち、自筆証書遺言は、自分1人で作成できる軽易な形式の遺言です。
遺言書を作成できる遺言者として必要な要件は、「遺言時に15歳以上であること」、「遺言時に意思能力があること」の2点で、この要件を満たせば誰でも作成ができるうえに費用もかかりません。
そのため、遺言書の形式のなかで最も多く作成されています。
但し、遺言書は遺言書作成者が亡き後、誰が見ても意味が分かるようにわかりやすく記載されている必要があり、法的に成立させるためにはいくつかの厳しいルールがあります。
自筆証書遺言の成立には、主に4つの重要なポイントがあります。
① 本人の手書きであること
② 作成した日付があること
③ 遺言者の署名・押印があること
④ 正しい方法で訂正されていること
これらを満たさないと、せっかく遺言書を作成しても法的には無効となることがあるため、作成には注意が必要です。
2019年1月に施行された相続法の改正前は、自筆証書遺言を作成する際には、全文を自分の手で記載する必要があり、パソコンで財産目録を作成することや、通帳のコピーを添付することは認められていませんでした。それが、相続法の改正により、自筆証書遺言の適用要件が緩和され、以前は認められていなかったパソコンで財産目録の作成をすることや、通帳のコピーを添付することが許されるようになりました。
これらの理由から、遺言書作成者の負担は軽減され、財産目録の誤記などの心配も不要となったため、相続法改正前より簡単に遺言書の作成ができるようになりました。
自筆証書遺言とは、1人で作成することができる唯一の遺言形式ですが、法的に成立させるには厳しいルールがいくつかあり、気を付けて作成しなければなりません。
相続内容が複雑な場合は、遺産相続に特化した弁護士などと相談のうえで遺言書を作成すると安心です。
財産を受け継ぐ家族が、笑顔で亡き人に感謝できるように、遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。