2019/11/08
コラム
成年後見人は、認知症や知的障がいで正しい判断ができない人の生活や財産を守り、さまざまな法的手続きなども行います。
しかし、成年後見人でも代理できない行為があるため、注意が必要です。
ここでは、成年後見人が本人を代理できない利益相反行為についてご紹介いたします。
成年後見人は本人の預金の引き出しや各種手続き、不動産の売却などを行うことができます。
しかし、本人または他人が不利益をこうむる行為に該当する場合は、代理できないので、注意が必要です。
例えば、成年後見人が本人の所有する家具や家電を買い取ることになったとします。
この場合本人の立場からしてみると、少しでも高く売れるよう値段設定をしますが、成年後見人としては自分がお金を出すので、少しでもお得に購入したいと考えるのではないでしょうか。
本人か成年後見人のどちらかが得をすると、もう一方が損をすることになってしまい、お互いの利益が衝突してしまいます。
そのため、このような行為は成年後見人であったとしても、代理することができないのです。
成年後見人は、本人が不利益をこうむらないよう援助するための人なので、少しでも高く売れるように努めなければなりません。
先述した行為のことを、利益相反行為と呼びます。
成年後見人が代理できない利益相反行為は、本人と成年後見人との間で行う売買行為のほかに以下のようなものも含まれます。
〈不動産の担保〉
本人の所有する不動産を担保に設定する行為は、利益相反行為となります。
成年後見人のために、本人の不動産を担保にするということは本人にとって不利益になってしまうからです。
〈相続の放棄〉
成年後見人が相続の破棄をすると、相続財産の取り分に偏りがうまれ、ほかの相続人と平等になりません。
そのため、相続を破棄した場合も利益相反行為とみなされてしまいます。
また、遺産相続において、成年後見人自身も相続人になる場合に、被後見人の取り分を多くし、結果的に成年後見人の取り分が減るというときも利益のぶつかり合いとなるため、利益相反行為にあたります。
利益相反行為の場合、不利益をこうむるかどうかは関係なく、代理できないことになってしまうのです。
成年後見人が代理することによって、本人が不利益をこうむってしまう利益相反行為については、代理が認められていません。
利益相反行為の内容は少しややこしいですが、成年後見人としての役割を正しくおこなうためには、しっかり覚えておく必要があります。
代理できないということを知らずに利益相反行為を行うと、場合によっては、賠償責任を問われるおそれもあるので注意しましょう