2021/09/28
コラム
相続遺産として現金を残さずに、アパートなどの不動産を購入して経営しておくことで、相続税対策になるといわれますが、いったいどのようなカラクリなのでしょうか。
今回は、アパート経営が相続税対策になるその理由と注意点についてご紹介したいと思います。
平成27年に改定された相続税法によって、相続税の基礎控除が減額となり、相続税の課税対象者が大幅に増加しています。
そんな状況下で、遺産を現金ではなく、アパートなどの不動産を購入して経営することで、相続税対策の効果が期待できますが、その主な理由は次の3つです。
1つめは、土地建物の評価額の値付けが現金よりも低いという理由です。
相続税の算出の際、土地の価格は路線価を、建物の価格は固定資産税評価額を利用しますが、これらはそれぞれが実際の取引価格よりも2~3割ほど安く設定されているため、現金を遺産とするよりお得です。
さらに、アパートなどの賃貸住宅の土地に関しては、要件を満たすことで、貸家建付地の減額措置を受けることができるのです。
2つめは、小規模住宅用地の減額の特例が適用されるという理由です。
被相続人が居住していた土地や、事業に使用していた土地であれば、一定の要件を満たすことで評価額を半減以上とすることができますが、アパートなどに使用されている土地に関しては、200㎡までの大きさであれば、50%の減額措置が適用されます。
3つめは、金融機関からの住宅ローン残債は相殺されるという理由です。
もし不動産を購入してアパート経営をする場合に住宅ローンを組むことになれば、ローン残高は全体の遺産額から差し引きされるため、土地建物の評価額が低いことと相まって、相続税対策に効果を生むことになるのです。
このように、メリットが多いアパート経営による相続税対策ですが、注意点もいくつか存在します。
たとえば、小規模住宅用地の減額の特例については、近年の税制改正により、相続時点でアパート経営が3年以内の場合は特例から除外されることになっています。
さらに、アパート経営は手放しでできるものではなく、集約や賃料の回収、修繕など、その管理に多大な労力がかかります。
管理を委託することも可能ですが、その分の手数料が差し引きされますし、収支のバランスを考えながら、毎年の確定申告に備えなければなりません。
そして、投資用の賃貸物件の場合、火災や地震などの災害へのリスクに対して災害者生活再建支援法の対象にならないこと、空き家率が高いアパートは負の資産になりかねないことなども、注意点として挙げることができます。
現金ではなくアパートなどの不動産を購入して賃貸用物件として経営することで、相続税対策としては効果が期待されます。
しかしながら、手放しで経営が進むわけではなく、さまざまな注意点があることにも十分配慮しなければなりません。